ファシリテーター
内山 拓朗(ビーレガシー)
「ビーレガシー」の編集長。地域に受け継がれてきた価値や挑戦、この土地の未来を切り開いていく方々に話を伺い、その魅力を伝えている。
安くておいしい一杯を、気軽に楽しめる立ち呑み屋。立ち呑み庶民を運営する株式会社人を大切にする会社は、飲食業では珍しい全員正社員・完全週休2日制という働き方に挑戦しています。
「人を大切にする会社」という社名を、あえて掲げる理由は何なのか。寿司・和食の料理人として11年間働いた後、立ち呑みの世界に飛び込み、事業を広げてきた代表取締役社長・辻戸康宏さんに伺いました。
客単価5,000円の世界から、「安くてうまい」立ち呑みへ
内山:辻戸さんはもともと、料理人としてキャリアを始められたそうですね。
辻戸:和食や寿司、居酒屋などで11年間働きました。その後、立ち呑みの世界に出会ったんです。
辻戸:小さな店でも多くのお客さまが来て、2〜3杯と料理を頼んでも1,000円ほど。客単価5,000円ほどの世界にいた自分には、とても新鮮でした。
辻戸:大阪の立ち呑みを100軒ほど見て回り、天満の「銀座屋」さんには休みの日に無給で通って学びました。独立後は、生活費を月15万円に抑え、残りは食材に使う。店で寝泊まりしながら、安くておいしいものを届けることに徹しました。

コロナ禍に出店を加速。「少数派」を選んだ理由
内山:最初の出店後、事業を広げていくうえで大きな転機になったのはいつでしょうか。
辻戸:個人事業主のままでは、人の採用も融資も物件探しも難しいと感じていました。そんななかコロナ禍でお客さまは半減しましたが、来てくださる方はいた。
辻戸:資金調達、人材、物件の状況が大きく変わるなかで、逆にチャンスだと思いました。みんなと同じ選択ではなく、あえて少数派を選んで出店を加速させました。

会社名は、従業員への思いを忘れないための「戒め」
内山:2020年に法人化され、「株式会社人を大切にする会社」という社名にされた背景を教えてください。
辻戸:一緒に働いてくれる従業員を大切にすることを、絶対に忘れたくなかったからです。少し照れくささはありましたが、会社が続いていくための戒めとして、この名前を掲げました。

全員正社員・完全週休2日制は、「休める仕組み」までつくってこそ
内山:全員正社員、完全週休2日制という仕組みは、飲食業では珍しい取り組みです。
辻戸:以前は1店舗に社員が1〜2人、アルバイトが10〜20人という体制で、社員がなかなか休めませんでした。子どもの運動会のような大切な日に、きちんと休める会社にしたかったんです。
辻戸:営業時間を短くし、以前は11時から13時ほど働くこともあった状況を見直しました。店長がシフトを調整し、ほかの店舗も助ける。休むことに負担を感じさせない仕組みまでつくることが大切だと考えています。

経験よりも、素直さ・前向きさ・行動力を見る
内山:採用では、どんな人と一緒に働きたいと考えていますか。
辻戸:半分ほどは未経験者です。教師やアパレルなど、さまざまな前職の人がいます。職人というより、ビジネスパーソンとしてお客さまのことを考えられる人に来てほしいですね。
辻戸:調理の無駄を減らすなど、未経験でも始めやすい環境を整えています。最初の1か月はOJTで全ポジションを経験し、昇進では素直さ、前向きさ、行動力を大切にしています。地に足のついた人は、2〜3年で大きく成長していきます。

関西で圧倒的一番へ。その先に「立ち呑みで日本一」
内山:これから、どんな会社・お店にしていきたいですか。
辻戸:収録時点で関西に12店舗あります。まずは関西で圧倒的一番になり、20店舗へ。その先は、立ち呑みの専門店として日本一を目指したいです。
辻戸:働くことを楽しめる人と一緒に、長く続けられる会社をつくっていきたい。人を大切にするということを、これからも形にしていきます。

安さやおいしさだけでなく、働く人が長く続けられる仕組みまでつくる。辻戸さんが掲げる「人を大切にする会社」は、社名だけでなく、日々の経営判断に表れていました。
立ち呑み庶民をもっと知りたい方へ
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