ファシリテーター

内山 拓朗(ビーレガシー)

「ビーレガシー」の編集長。地域に受け継がれてきた価値や挑戦、この土地の未来を切り開いていく方々に話を伺い、その魅力を伝えている。

吉祥寺で眼鏡店「オプテリア グラシアス」を営む伊藤次郎さん。今回伺ったのは、眼鏡店の比較プラットフォーム「メガログ」の構想です。

目指すのは、価格や知名度だけでは見えにくい店ごとの違いを、生活者が自分の目と暮らしに合った選び方へつなげられるようにすることです。

メガログの構想は、どのような経験や課題意識から生まれたのか。伊藤さんに、眼鏡店を営む原点と、店と生活者をつなぐための挑戦を伺いました。

どこでつくればいいのか。その迷いに、道しるべを

インタビューで話す伊藤次郎さん
写真:伊藤次郎さん(インタビュー収録より)

内山:今日はまず、伊藤さんのお店のことから伺わせてください。オプテリア グラシアスには、どんな方がいらっしゃるのでしょうか。

伊藤:僕は「眼鏡屋さんの駆け込み寺」と言っているんです。困った方たちがうちに駆け込んでこられる。お困りごとは本当に多岐にわたるので、一つひとつに答えていく形ですね。

内山:「眼鏡屋さんの駆け込み寺」。困ったときに相談できる場所があるのは、心強いですね。その伊藤さんが立ち上げようとしている「メガログ」は、どんなサービスなのでしょうか。

伊藤:ざっくり言えば、眼鏡業界版の「食べログ」のようなものです。眼鏡をどこで作ったらいいのか、そもそも分からない方が多いんですよ。

うちのお客さまが、ある会社の社長さんに「どうしてそのお店で眼鏡を作っているんですか」と聞いたら、「どこで作ったらいいか分からない」と答えたそうなんです。だったら、その道しるべを作りましょうと。それがメガログだと思っています。

技術がある店が、検索の前に埋もれていく

オプテリア グラシアスの店舗外観
写真:オプテリア グラシアス公式サイトより

内山:「どこで作ればいいか分からない」という迷いは、案外身近なものなんですね。今、眼鏡店を苦しめているのは、どんなことだと感じていますか。

伊藤:まず、僕ら自身がしっかり勉強して、サービスを磨くことは大事です。そのうえで、中小の眼鏡店に足りていないのは広報力だと思っています。腕があっても、その良さが伝わらず、お店がなくなっていく。

僕がいる吉祥寺では眼鏡店が足りないとは感じません。でも、地方へ行くと、この店もあの店もなくなって、この街には眼鏡店がない、という空白地帯があるんです。僕は眼鏡店を、暮らしを支えるインフラだと考えています。

技術の底上げをしようと、検査のやり方を教える活動も続けてきました。でも、それだけでは足りなかった。店の違いを公平に比較できる場も必要なんです。

内山:腕のあるお店が、知られないままなくなるのは、もったいないですね。ただ、「比較される」と聞くと、身構えてしまうお店もあるのではないでしょうか。

伊藤:実際、そういう反応もあります。でも、地域でしっかりやっているお店は、自分のお客さまをちゃんと抱えているんですよね。そこに自信を持って、自分の言葉でもっとお店を伝えてほしい。

ホームページがなければ、ウェブで比較検討する土俵にすら乗れない。メガログに入ることで、ホームページを持っていないお店も見つけてもらえるようにしたいんです。

遠回りの経験から、眼鏡店をつなぐ構想へ

オプテリア グラシアスで扱う眼鏡フレーム
写真:オプテリア グラシアス公式サイトより

内山:お店のことに加えて、伊藤さんご自身の歩みも、もう少し伺いたくなりました。最初から眼鏡の仕事をされていたわけではないんですよね。

伊藤:もともとは建築業で、鉄筋工を8年ほどやっていました。親方を目指していたんですが、腰と膝を壊してしまって。次に入った外食の仕事でも、長時間働いて体を壊してしまったんです。

その後、眼鏡のベンチャー企業に入りました。チェーン展開をしたいから、外食での経験を生かして仕事をマニュアル化してくれないか、と。それが眼鏡業界との出会いでした。

内山:外食での経験が、眼鏡の仕事につながったんですね。そこから、ご自身のお店を開くことになったのは、どんなきっかけだったのでしょうか。

伊藤:勤めていた会社の経営が厳しくなって、店舗を減らしていったんです。僕はその社長さんが大好きで、何か力になれないかと思っていました。

撤退した店の機材が残っていたので、僕が買い取って店を作れば、社長の資金繰りも少し楽になるかなと。それで独立を考え始めました。辞めてからは会社の設立準備をしながら、別の眼鏡店へ半年間、週に1日ほど無給で修行に通いました。

内山:準備と並行して修行にも通われたんですね。メガログのホームページも、ご自身で作られているんですか。

伊藤:はい。本当に一人で、ノーコードで、AIと壁打ちしながら作っています。

構想を思いついたのは2018年です。いろいろな方に話して賛同はいただいたんですが、実際にはなかなか動かなかった。当時はサイトを作る見積もりも大きな金額で、小さな会社にはリスクがありました。

ところがAIが普及して、小さな金額で始められるようになった。みんなを巻き込んで動かなかったなら、まず一人でやってみようと。まだベータ版で、本格稼働する前ですが、それが今の段階です。

安い・高いだけではない、眼鏡を選ぶ視点

眼鏡の価値について話す伊藤次郎さん
写真:伊藤次郎さん(インタビュー収録より)

内山:眼鏡に詳しくない方の気持ちで、あえて伺います。「まずは安いお店で十分」とも思いそうですが、時間をかけて作る眼鏡には、どんな価値があるのでしょうか。

伊藤:食に例えると分かりやすいと思います。回転寿司と、一席で何万円もする寿司店では、同じ寿司でも違いますよね。職人さんがシャリの炊き方や握り方、ネタのさばき方で勝負するように、僕らはレンズとフレームをどう仕上げるかで勝負しています。

視力測定、フィッティング、そしてレンズやフレームの加工。そうしたところに手間をかけて、見え方の違いや、楽に見えることにつなげていくんです。

内山:なるほど、レンズやフレームを選ぶだけでなく、どう仕上げるかにも違いがあるんですね。視力測定にも、かなり時間と手間をかけられているのでしょうか。

伊藤:僕は普通に1時間くらい、場合によっては2時間くらい検査することもあります。手間をかけないと答えを出すのが怖いから、やっているんです。もっと上手な方なら短い時間でできるのかもしれませんが、今の僕にはそれくらい必要なんですね。

比べることは、優劣を決めるためではない

眼鏡店を複数の視点で分類する図
図:眼鏡店の4分類

内山:眼鏡選びは、思っていた以上に奥が深いですね。メガログは中小のお店だけを応援するのではなく、いろいろなお店を比べられる場にしたい、ということなんですね。

伊藤:そうです。大手も中小も、すべてを網羅することを前提にしています。比較したうえでどう選ぶかは、お客さまが決めることです。

僕は、生活者が眼鏡を知ることが、健全な業界につながると考えています。だから、まずは眼鏡のことを知ってもらいたい。眼鏡を買うことを単なるコストではなく、自分の暮らしへの投資としても考えてほしいんですね。

内山:「暮らしへの投資」と考えると、選び方も変わってきそうですね。つい「高いか安いか」で考えがちですが、それ以外にも、どんな違いを見つけられるのでしょうか。

伊藤:ファッション性なのか、機能性なのか。価格重視なのか、価値重視なのか。その軸のなかに、いろいろな眼鏡店があります。

ただ、ゼロか1かで分けるものではないんです。ファッションも機能も、価格も価値も、その間のどこかに自分が求める答えがあるはずです。そういう違いを知ったうえで選んでいただきたいと思っています。

店の知識と、困っている人をつなぐ

店舗の特徴を複数項目で示すレーダーチャート
図:眼鏡店の特徴を複数の項目で示す表示イメージ

内山:その違いが見えると、お店選びの手がかりになりますね。特徴は、眼鏡店自身が入力していく仕組みですか。

伊藤:自分のお店のこだわりを、レーダーチャートで見せる仕組みを考えています。視力測定、フィッティング、品ぞろえ、ファッションの提案など、自分のお店のチャームポイントを可視化するんです。

内山:一方で、「うちには特別な強みがない」とためらうお店もあるかもしれません。伊藤さんなら、どんなふうに声をかけたいですか。

伊藤:それは謙遜されているか、気づいていないだけだと思います。どんな眼鏡店にも、必ず価値がある。長年培ってきた知識と経験は宝物なんですよ。どうか自信を持って、それを生かしてほしいです。

内山:知識と経験は「宝物」。心強い言葉ですね。参加してみたいと思ったら、まず何から始めればいいのでしょうか。

伊藤:まずはメールで資料請求をしていただければ、記入用のシートなどをお送りします。店名や住所、ホームページやSNSのURLなどを書いて、店舗や店内の写真と一緒に送っていただく。登録作業は僕の方で行う形です。

内山:登録まで引き受けてくださるんですね。どんなサービスになるのか楽しみです。ほぼお一人で取り組む伊藤さんを、何が突き動かしているのでしょうか。

伊藤:これまで、お客さまに支えていただいて今の僕があります。お客さまが泣いて喜んでくださることもある。そういう方々に恩返しをしたいんです。

一方で、「どこの眼鏡店に行っても助けてもらえない」と困っている方もいらっしゃる。その方と、腕のいい眼鏡店やこだわりのある店をちゃんとつなぎたい。悔しい涙がうれしい涙に変わったら、こんな喜びはないですよね。

内山:「悔しい涙がうれしい涙に」という言葉に、思いが伝わってきます。最後に、眼鏡店の方と眼鏡を使う方へ、メッセージをいただけますか。

伊藤:眼鏡店の方には、未来はまだ決まっていないと伝えたいです。自分のお店が発展するために何が必要か。そのためにメガログが役立つと感じたら、ぜひ参加してほしい。

使う方には、眼鏡に関心がなくても、自分の暮らしには関心があるはずですよね、と伝えたいです。メガログでは眼鏡のことを学べるコラムも用意していきます。少しでも違いを知って、納得して買い物をしていただきたいですね。

関連情報

メガログの資料請求・お問い合わせ、オプテリア グラシアスの公式サイトは以下をご覧ください。

内容詳細
メガログ 資料請求・お問い合わせopteria-glassias@nifty.com(担当:伊藤)
オプテリア グラシアス 公式サイト公式サイト
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