ファシリテーター
内山 拓朗 ビーレガシー編集長
地域で活動する人々に話を聞き、その仕事や思いを伝える。
都心へ出やすく、少し自転車を走らせると緑がある。貴志信智さんは、学生時代に出会った久喜市を「ちょうどいいまち」と表現します。
地域の人に受け入れられた経験から、久喜で政治に挑むようになった貴志さん。市議会議員として駅に立ち続けた理由と、市長になった今も大切にしている市民との距離を伺いました。
※本記事はインタビューをもとに、発言の趣旨を保って編集しています。読みやすさのため、聞き手の質問・要約は一部再構成しています。取り組みについての発言は収録時点のものです。
都心と緑の距離がちょうどいい
内山: まず、久喜市はどんなまちなのか、お聞かせいただけますか。
貴志: 一言でいうと、ちょうどいいまちです。都心へも1時間圏内で行けますし、JRと東武が通っていて、高速道路も充実しています。それでいて、駅から少し自転車に乗ると田んぼや豊かな緑があるんです。
内山: もともとは秋田県のご出身ですよね。実際に久喜へ来て、どんなことを感じましたか。
貴志: 初めて来たのは18歳の頃ですが、今と同じように、ちょうどいいまちだなと思いました。秋田に住んでいた自分からすると、1時間で新宿に行けるというのは、もう都心なんですよね。その距離感で、少し行けばほっとできる緑もある。素晴らしいなと思いました。

地域の面白さを教えてくれた久喜で政治に挑む
内山: 学生時代には、お笑いにも取り組まれていたんですね。
貴志: 学生時代が一番本気でやっていた時期です。就職した後も、地域をお笑いで盛り上げたいという思いがあって、地域の中学生や大学生とコンビを組んで、地域行事でお笑いをやったり、M-1に出たりしていました。
内山: お笑いをやっていた頃から、地域をよくしたいという思いもあったのでしょうか。
貴志: 当時は、目の前の人を笑わせたいという思いでした。人を笑わせることは、人を喜ばせることでもあるので、まちづくりとつながるところはあると思います。
内山: そこから秘書を経て、自分も市議会議員になろうと決めたきっかけは何だったんですか。
貴志: 議会の年齢構成が偏っていると感じたことです。住民の代表であるなら、世代も公平であるべきではないか。特に当時は、地方議会の年齢の偏りが大きいと感じていました。それを当事者として変えようと、自分で飛び込もうと思ったんです。
内山: 出身地ではない久喜で挑戦したことには、どんな思いがあったのでしょうか。
貴志: 地域の方に、とてもかわいがっていただいたんです。学生の頃、小学校でボランティアをしたり、中学野球の指導に関わったり、大人のソフトボールチームに入れていただいたりしました。地域の面白さを教えてくれたのが久喜だったので、ここで挑戦したいと思いました。

駅に立ち自転車で回ることが原点
内山: 市議時代の活動では、駅立ちも印象的です。続けるなかで、ご苦労もあったのではないでしょうか。
貴志: 苦労といえば苦労かもしれませんが、原点なので、当たり前のように続けてきたというのが12年間の実感です。朝は皆さんお忙しいので、通り過ぎていく方も多い。そういう場所にいる自分を忘れないことが大切だと思っています。
市役所や議会という狭い世界だけにいると、そのなかの価値観が大きく見えてしまうことがあります。駅に立って、広い価値観を思い出す。そのためにも立ち続けたいと思っています。
内山: 自転車で回る姿も動画で拝見しました。
貴志: 最初は車がなかったという事情もあったんですが、車からでは見えない景色がたくさんあります。道路の状態や、見通しのよくない交差点などは、自転車だから気づける。すぐに降りてコミュニケーションを取れることも、大事だと思います。
内山: 自転車に乗っていると、声をかけられることも多そうですね。
貴志: あります。たすきをつけて、背中に旗を背負って、スピーカーで話しながら走っているので、最初は珍しがられるんですよね。ただ、そこで姿を見て、駅でも見かけて、自宅にチラシが届くと、話を聞いてみようと思ってくださる。自転車も、駅に立つ時間も、紙やSNSで発信することも、全部が重要だと思います。

課題を次の世代へ先送りしない
内山: 市長に挑戦しようと思った理由も、お聞かせいただけますか。
貴志: 議員だからこそできる活動は多いですが、予算をどこに配分するかという具体的な使い方を決めるには、市長に挑戦する必要があると思いました。
政治の大きな課題は、先送りだと思っています。難しい課題や厳しい現実を先に送っていくと、最終的に負担が回るのは将来の子どもたちです。今向き合える課題は、できるだけ今、解決していきたい。そのために決めなければいけない場面では、責任を持って決めていく姿勢で取り組みたいと思っています。
内山: はっきり決めることで、反対意見が出ることもあると思います。発信するうえで気をつけていることはありますか。
貴志: 自分の発信には責任が伴うので、できるだけ丁寧に伝えることが基本です。私の考えが必ずしも正解とは思っていません。発信した結果、返ってくる意見もありますから、そこは丁寧に聞いていくことが重要だと思っています。

安全で便利で快適な暮らしを支える
内山: 今、特に力を入れたいと考えていることは何でしょうか。
貴志: まず、市の財政を立て直すことです。ただ、立て直すこと自体が目的ではなく、その先にある久喜市の未来のためです。安全であること、便利であること、快適であること。その方針のもと、見守りカメラを増やしたり、市役所に行かなくても済む手続きを増やしたりしていきたいと考えています。
市役所に来ないでください、という意味ではありません。対面だからこそ温度が伝わり、適切な対応ができる場面もあります。そこに人手と時間を充てるためにも、スマホやパソコンで完結できる手続きは、自宅で済ませられるようにしていきたいんです。
内山: 自宅で済ませられる手続きを増やすことで、対面の対応に人手や時間を充てたい、ということですね。ほかに、暮らしを支える取り組みとして力を入れたいことはありますか。
貴志: 今、力を入れたいと思っているのが、妊産婦の皆さんの移動手段の支援です。
内山: 具体的には、どんな取り組みなのでしょうか。
貴志: ご自身で運転して通院するのが難しい場合もあるので、移動をスムーズにするための施策を、今、制度設計しているところです。
それから、小学校の体育館へのエアコン設置を早く進めたいと思っています。学校教育のためだけでなく、災害が起きたときには避難所にもなります。暑さによって子どもたちの運動の機会が制限されてしまうなかで、その機会を守るためにも必要だと考えています。

税金の使い道は効果を伝えるまでが責任
内山: 貴志市政は、どうなったら成功といえるのでしょうか。
貴志: 安全、便利、快適ということを、生活のなかで実感していただけるようになりたいです。行政はいろいろなことをしていますが、それによって何が変わったのか、生活のなかでは感じにくいこともあります。市役所が便利になったね、まちが安全になったね、と実感できる市政にしたいと思っています。
内山: 実際に取り組むだけでなく、何をして、どう変わったのかを伝えることも大事ですね。
貴志: そこは一番大事なところです。税金は、市民の皆さんからお預かりしたお金です。そのお金でどんな効果が生まれたのか、お知らせするまでがセットだと思っています。
広報紙に書いた、ホームページに載せた、で終わりではありません。届くところまで考えなければいけない。SNSや動画も活用して、税金をどう使い、その結果どうよくなったのか、説明する責任を果たしていきたいと思っています。

久喜の魅力を市の外へ届ける
内山: いろいろな現場へ足を運んで発信されていて、試行錯誤されている様子が伝わってきます。
貴志: 今は「週刊久喜市ニュース」で、いろいろな団体などを訪ね、市の魅力を伝えています。まずは市内で行われている活動を市民の皆さんに知っていただくことが大きな目的ですが、これからは久喜を全国や世界へ発信することにも活用したいと思っています。
内山: 海外に向けて発信することも、考えていらっしゃるんですね。
貴志: そうです。梨やイチゴはとてもおいしいですし、地域の誇りであるお祭りも、世界に伝える価値があると思っています。海外からお客様に来ていただける可能性も十分にある。その資源の見せ方や生かし方には、行政が関われる余地も大きいと思います。久喜市内や埼玉県内にとどまらず、もっと広い範囲へ発信していきたいですね。

関連情報
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